[第一特集]公務員賃金と地域格差
◉地方を衰退させる賃金構造に迫る
国公労連は、公務員賃金の「地域手当」の問題を検証するチームを2019年に立ち上げ、約2年の議論を経て報告書を作成しました。地域手当は、役職・職務が同じでも勤務地のみで賃金に2割もの格差をつける制度です。民間労働者の賃金の地域間格差を強引に公務に反映させたものですが、職務給の原則や同一労働同一賃金政策と矛盾するばかりか、地方の民間賃金、地域経済にも負の影響を及ぼし、格差をより拡大させる、まさに「地方創生」と逆行する賃金制度と言えます。
人間らしい暮らしができる最低限の賃金水準は、実は日本全国どこでも大きな差がありません。持続可能な雇用・経済政策の観点からも、最低賃金の地域間格差を解消するとともに、公務員賃金の地域格差も見直していく。本特集がそうした全国的な議論を始めるための素材になれば幸いです。
[第二特集]研究機関の多様性とデジタルトランスフォーメーション
◉このままではノーベル賞も無縁に
OECDによる各国2019年調査で、日本の女性研究者比率は16.9%です。内訳は、大学27.9%、国立研究機関19.5%、企業10.2%。そして、これらの比率すべてがOECDの中で突出して最下位となっています。日本は女性が最も研究者になれない国なのです。また、IT 競争力(The NetworkReadiness Indexによる各国2020年のIT競争力スコア※政府・企業レベルだけでなく国民生活レベル等まで含む)は、世界134か国中15位とデジタル化においても出遅れるなど、日本の研究力は年々低下しています。近年、ノーベル賞を受賞した研究者が「日本の研究環境を早く改善しないと近々ノーベル賞も取れなくなるだろう」というような発言をするのが恒例となっています。本特集では、日本の研究機関が直面する2大課題(多様性とデジタルトランスフォーメーション)を考えます。
[第一特集]公務員賃金と地域格差
賃金の地域間格差解消戦略構築プロジェクトチーム最終報告書 ……………… 005
国公労連・賃金の地域間格差解消戦略構築プロジェクトチーム
最低賃金アクションプランと公務員賃金運動への期待 ……………… 051
黒澤幸一 全国労働組合総連合(全労連)事務局長
[第二特集] 研究機関の多様性とデジタルトランスフォーメーション
研究機関にとってダイバーシティとは?
―― 理化学研究所の体験から ……………… 061
原山優子 理化学研究所理事・ダイバーシティ推進室長
デジタルトランスフォーメーションと国立研究機関 ……………… 075
市川 類 一橋大学イノベーション研究センター教授
グラフで見る日本の激しい研究力低下 ……………… 092
井上 伸 国公労連中央執行委員
[連載]難民アートプロジェクト 第10回
来たるべき「アフガニスタン」にむけて ……………… 098
西 亮太 中央大学法学部准教授
[連載]スミレとヒマワリ 第12回
父を誇りに思った日 ……………… 104
白神優理子 弁護士
[連載]KENちゃんの職場訪問記 第3回
特許庁の巻 ……………… 110
KEN
[連載]国家公務員の労働条件Q&A
きほんの「き」から 第33回
公務員なのに最低賃金割れ? ……………… 116
国公労連
[連載]8プロ映画部日誌 第2回
ジャーナリズムを支える人々 ……………… 118
皿倉のぼる 放送作家/8プロ映画部総合演出
[書評]KOKKO Editor’s Book Review
『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』/
『オードリー・タンの思考』/
『不寛容の時代 ボクらは『貧困強制社会』を生きている』 ……………… 123
KOKKO編集部
今号は本来11月発行予定でしたが、諸般の事情から12月発行となったことをお詫びいたします。
次号は予定通り2022年2月発行予定です。
表紙イラスト オカヤイヅミ
デザイン ナルティス/末吉亮(図工ファイブ)
本文組版 はあどわあく